この地方に伝わる伝統もち料理は、50とも60ともいわれておりますが、
ひと口もち膳は、私ども地元民が日頃食する基本の9種類でおつくりしております。
夏は、何といってもずんだ餅とショウガ餅。
ずんだは、大豆の若い豆を茹でてつぶして摺って、砂糖と塩で味付けます。
ショウガ餅は、椎茸に生姜のしぼり汁を加えて甘辛く味をとります。
私の生家では、お盆には必ずこの2種類を作っていました。
なにしろ、冷凍庫がない時代は、夏場限りのずんだ餅でしたから、
それはそれは楽しみで、鞘から豆を取り出す作業を手伝ったものです。
美味しいものにあふれ、ごちそう感もなくなりつつあるもち料理ですが、
長い間受け継がれてきた搗きたてのもち料理という稀有な食文化。
この手間暇かけて作ることこそが、私共のおもてなしの基本です。