鰯雲

肌寒いほどの朝。

すっかり秋の空気。

空を見上げれば鰯雲でした。

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鰯雲人に告ぐべきことならず  加藤楸邨

恩師である楸邨先生は

一関中学校(現一関一高)に

在学していた時期があります。

私は卒論の面接で、僕の後輩じゃないか!

本を貸してあげるから

家に取りにおいでといわれ

お宅にお邪魔したことがあります。

友人にはうらやましがられましたが

緊張、いかばかりであったことか!

先生が

「歌えるかなぁ、校歌・・・」

とおっしゃったので

私が歌い始め、先生が唱和。

校歌三番まで二人で歌いました。

奥様は

「まあ、歌えたじゃないですか!」

と拍手。

実は、俳人でもある知世子夫人は

白い割烹着姿で

少し離れた場所に正座しておられ

私と先生のお話を

聞いておられたのでした。

この居るのだけれども

決して出しゃばらない

話にも入ってこない

しかしながら

温かに私を

迎え入れてくださっている

夫人の心が

私に

伝わってくる・・・。

この距離感をもった

絶妙な接待は

とても心地よく

長い間心に残りました。

後に

神様の手違いかと思える

接客業についた

悩める私は

この時の知世子夫人の

たたづまいを

折につけ思い出すことになりました。

先生は一関時代をとても

懐かしんで

たくさんの思い出を

聞かせてくださいました。

伺ったのは夏休み明けでした。

もしかして

その時も

今日のような

鰯雲だったのかもしれません。

 

 

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